2016年6月30日木曜日

イギリスの国民投票を巡る日本の報道のレベルの低さ


昨日は労働党の党首で、現在不信任案が提出されているジェレミー・コービンさんの支持者の集会に行ってきました。

「住む家を確保すること、教育を無料にすること、社会保障を充実させること、まだまだ道半ばである。」と言っていました。

キャメロンさんの辞任で、次期首相が誰になるのか。
そして、野党第1党の労働党も党首選が行われることになります。

さて、表題の件です。


以下 読売新聞より
 英国が国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めたことを巡って28日、閣議後の記者会見で、国民投票がポピュリズム(大衆迎合主義)に陥る危険性を指摘する声が相次いだ。
 河野国家公安委員長は「離脱派の公約があまり正確ではなかったとも言われている。ポピュリズムに陥らないよう、民主主義で物事を決める難しさを再認識する必要がある」と語った。英国では再投票を求める署名活動が広がるなど、離脱決定を後悔する動きが出ていることを踏まえたものだ。 麻生副総理兼財務相は「議院内閣制を良しとする英国で、代議員制度ではなく直接投票を選んだのはいかがなものか」と述べ、議会で冷静に議論を進めるべきだったと強調した。
「国民投票がポピュリズムに陥る危険性」なんて当たり前の話で、
「車が交通事故を起こす危険性」みたいな話ですよ。

国民投票を歴史上、一度もしたことのない日本。
その国の政府は未だにこんなことを言っているんですか。
悲しくなってきます。

「正確な情報が出てこない」なんて、
これもまた何を言っているのか、
何も言っていないのと同じというか。

何が正確かは、国民一人ひとりが判断するんですよ。
選挙だって、難しいんですよ。
誰が本当のことを言っているのか判断するのは。
国民投票だって一緒。

「直接投票ではなく、議会で議論を進めるべき」
というが、代議員はあくまで国民の代わりであって、
EU離脱など特に国民に大きな影響を及ぼす事案においては、
主権の存する国民に直接問うのは至極当然のことである。

もし、EU離脱を進めてきたイギリス独立党が
単独与党の政権をとったからといって、
議会制民主主義だからといって、国民に問わずにEUを離脱することは、
同様に許されないことである。


いずれも「国民投票」自体にありもしない理想を抱いているのか、
それとも「国民投票」を触れてはいけない醜悪なものだと思っているのか。
「国民投票」をめぐる政治家や、メディアの論調にがっかりしています。





離脱を進めるイギリス独立党が、当時直近のEU議員を選ぶ選挙で第1党になり、
国民から、離脱を求める声が少なくなかったのが事実。
たしかに、キャメロンさんには勝算があった。だから国民投票を実施した。
でも負けた。国民の本音を読み切れてなかった。
彼は国民投票の結果を尊重すると言った。
そして「後悔してない」と言った。

でも記事では
本音は「国民投票をしたことを後悔している」と言わせたいかのようです。
そんなことは言ってないのに、そういうニュアンスで書かれていると思いませんか。
こんな書き方していいのでしょうか。
言ってないのに。



こちらは、日本のメディアだけではなく、イギリスのメディアでもよく報じられています。「離脱に投票したことを後悔している」という人が7.1%いたということ。こちらはよく報じられているんですが、残留に投票したことを後悔しているという人も4.4%います。こちらはあまり報じられていません。

元データは「サーベイション」より→
http://survation.com/wp-content/uploads/2016/06/Final-MoS-Post-Brexit-Tables-240616SWCH-1c0d3h3.pdf

投票先に後悔する人が現れるなんて、当たり前です。選挙だって一緒です。というより人生で「こっちにしとけばよかった」と思うことがあるのは当然です。結果は出てしまいました。これが事実です。人生にはやり直しがききませんし、国民投票もやり直しがききません。そういう話なので、慎重に選ぶ必要があるのです。それでも、後悔するかもしれません。人間ですから。しかし議員は後悔するような選択をしないのでしょうか。議員も間違った選択をしないのでしょうか。間違えますよ、議員だって人間ですから。



これは日本だけではなく、イギリスでも話題になっていることですが、結果を受けて、その結果について調べるなんて当たり前じゃないですか。しかも250%増なんて、例えば1万が3万5千ですよ。離脱派だけじゃなくて、むしろ残留派の方もいたでしょうね。EU離脱なんて考えてなくて、結果が出てから調べているケースもあるでしょう。投票権を持つことができなかったイギリス在住のEU市民もいるでしょう。そして推測の通り一定数はよく考えずに投票した人はいるでしょう。実際、街中で話を聞く中で「EUってそもそもなんですか?」って逆に聞かれたこともありましたし。でも記事のように、
この決定が自国に何をもたらすのかを事前に調べた国民は少なかったのかもしれない。  
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1606/25/news026.html
って、ちょっと待ってくださいよ。Google検索された数が増えたことを根拠にして「事前に調べずに投票したんじゃないか」なんて考察するなんて乱暴じゃないですか?

実際に話を聞く中で大方の人たちはこの投票の重要さを理解していましたし、前日の夜まで悩み抜いて投票に向かった人もいました。これはイギリス人への侮辱ですし、誤った認識を日本人に与えかねません。


日本語メディアでの「国民投票」のレベルの低さをまとめると以下の通りです。

「国民投票がポピュリズムに陥る可能性」←当たり前
「正確な情報をつかむのは難しい」←当たり前
「議会制民主主義の国でも直接投票を用いる」←当たり前
「離脱に投票したのを後悔している人がいる」←当たり前
「離脱が決まって一斉に「EUとは何か」とググられた」←当たり前

限られた時間で限られた文字数で各メディアの方々が伝えなければならない不自由は分かりますが、今、日本のメディアがするべきは「国民投票」叩きではありません。
今、日本は歴史上初めての国民投票が行われる可能性があるわけです。
「国民投票」と一口に言っても、各国ですでに行われている法律やルールは様々です。
今一度、各国の国民投票を検証し直し、実際に行われつつある日本初の「国民投票」をどうデザインするかを考えていくべきです。
どうしたら情報が行き渡るか、どうしたら議論が深まるか、
どうしたら関心が高まるか、どう公平性を保つのか。

投票年齢は?設問は?広報期間は?キャンペーンの方法は?

日本国憲法の改正手続きに関する国民投票法は既に制定され、
施行されていますが、憲法改正以外での国民投票の活用などについても、
日本で議論されるようになるまで、僕ももうすこし頑張ろうと思います。