2016年11月12日土曜日

2013年僕はドイツをどう見ていたか。

2013年 ベルリン電力網の買取の是非を問う住民投票

2013年のドイツのメモが出てきた。

○ドイツの脱原発

―なぜドイツの脱原発が注目されているのか

ドイツは日本と共通点が多いため、よく比較される。ともに、第二次世界大戦の敗戦国であり、そこから再出発をして経済的にのし上がってきたという歴史が重なる。また世界のGDPランキングでも3位が日本、4位がドイツ。また自動車産業が盛んでベンツ、フォルクスワーゲン、ポルシェ、BMWなどはよく知られているドイツの車。国土の面積もほぼ一緒で、世界では日本が62位、ドイツが63位である。高齢化や、少子化の問題に直面しているのも同様で、ドイツの出生率は1.36、日本は1.29。性格はまじめな国民性、法律をきちんと守り、綺麗好きで几帳面。勤勉なところも似ていると言われる。


−共通点も多いドイツは脱原発に向かい始めた

「福島原発を機にドイツが脱原発を決めた」と思っている人もいるが、実はもう2000年の時点でドイツ社会民主党と、緑の党の連立政権が2022年までに原発0と決めたのだった。しかし、2009年に誕生した保守政権の第二次メルケル政権によって2010年の9月5日、産業界の悲願であった脱原発の2030年代までの延長を決めた。しかしそのたった半年後、福島原発事故が起こり、メルケル首相が延長を取りやめ、従来通り2022年までに戻した。


―なぜ原発0にするのか
チェルノブイリに続く、日本の原発事故。
メルケル首相は倫理委員会を招集。その結論は「原発事故の可能性は0になることはなく、事故が起きた時の被害が甚大であり、エネルギー転換(Energiewende)によって脱原発は可能だから。」ということだったから。エネルギー大転換とは「大々的な省エネ、エネルギーの高効率化対策の推進」「地域暖房+コジェネの推進」「再生可能エネルギーの推進」というこの3本の柱から成り立っている。
福島原発事故後、ドイツ4都市で合計25万人規模の反原発デモが行われ、バーデン・ビュルテンブルク州(州都シュトゥットガルト)の州首相が50年以上保守政党(メルケルさんと同じキリスト教社会同盟)に任されていたのに、緑の党に変わったことなどから。


―現状はどうか
2011年には再生可能エネルギーの発電量が原子力発電を上回った。
2013年 褐炭25.6% 再生可能エネルギー23.9% 石炭19.6% 原子力15.4%
再生可能エネルギーは風力、バイオマス、太陽光、水力、家庭ごみの順に多い。
ちなみに日本は9%だが、ほとんどが水力発電で水力を除くと1.6%。




「ドイツはフランスから原発の電気を輸入している?」
輸入している。しかしそれ以上に輸出をしていることはあまり語られていない。ドイツは2003年以降からずっと電力の輸出国であり、原発8基を急に止めた2011年度でさえ、輸出が超過している。2011年度5963Gwh 輸出が超過しており、2012年度は22827Gwh 2013年度は34864Gwhが輸出されている。対フランスでは輸入の方が多いが、主な輸出先は、オランダ、オーストリア、スイスなどです。ヨーロッパでは送電網が国を超えてつながっており、売買が頻繁に行われている。夏には余裕がない月もありるが、それは、発電所が定期点検に入るために、供給力が低下するためである。(ドレスデン情報ファイルより)


「再生可能エネルギーの台頭で経済は大丈夫?」

再生可能エネルギーの拡充は、経済全体にプラスの効果をもたらす。経済規模の拡大、長期的なエネルギー―コストの削減、さらには投資、地域価値の創出、雇用など。再生可能エネルギー分野の総就業者数は、2012年でおよそ378.000人。2020年までに、業界では就業者数が500.000人に増加すると計算されている。その場合、設備を用いた生産の側のみならず、そこに供給を行う産業の側においても新たな職場が誕生する。例えば風力エネルギー設備はスチール製であり、これを供給するのは伝統的な鉄鋼会社だ。多くの会社が再生可能エネルギー分野に対する納品業者として、成長し、経済拠点をドイツにおいている。中央ヨーロッパでは何十年も前からサービス業が盛んだったが、再生可能エネルギーはこれに立ち向かうほどの勢いがある。ドイツは再生可能エネルギー言を将来さらに拡充しようとしているため、これに隣接する産業分野の成長が見込まれる。(ドイツにおけるエネルギーシフト@ドイツ大使館)




―これからはどうなるのか

○料金

値上げが続いていることが問題点として挙げられているが、固定価格の買い取り価格を引き下げ、平均17セントから12セントに引き下げ、再生可能エネルギーを50%以上供給する電力会社は、EEG付加金を免除するという特典があったが、負担をさせていくことが決まった。


○送電網の問題
ドイツ北部で作られた電気が南の消費地にうまくまわっていないために周辺国に売ってしまっている現状を改めていく方針。

○需要と供給のバランス
大型の新規設備の運営事業者に対しては発電した電力を買取制度によらず、市場で直接販売することを義務づける。再生可能エネルギーで30年には50%、50年には80%を賄うことを法律で定めている。


○ドイツの民主主義

―性格 娯楽としての議論

ドイツ人は激しい議論とか、反対意見を言うこと・言われることに抵抗がないけれど、日本人は和の精神というか、そういうのが苦手。和の精神も大事だけれど闘わないと成し遂げられないことがある。娯楽としての「議論」がドイツにはある。例えば日本人は日曜日に笑点を見て、サザエさんを見て、大河ドラマを見たりするが、ドイツでは討論番組を家族で見て、そのテーマについて議論すること。などが娯楽としてある。例えば、ドイツ人家族の家に夕ご飯に呼んでもらったりしたときも女性の社会進出について、政党のことについてなど議論たりした。

―選挙制度
ドイツの連邦議会「小選挙区比例代表併用制」を採用している。少数政党乱立を防ぐために5%条項が設けられており、5%以下は議員を出すことができない。ただし、小選挙区で3人の政治家を出す場合には適用されない。日本の衆議院の「小選挙区比例代表並立制」小選挙区が62.5%を占める。残りが比例で決まる。名前が似ているけど、ドイツの方が、民意が反映されやすい。

―デモと意思表示
ハイデルベルクという小さな町にいたのだが、ペットの権利、労働状況改善、監視社会反対のデモ、交通機関のストライキなどもあった。脱原発を求めるステッカーもいたる所で見られたし、日本語で書いてあるバッグを持っている女性もハイデルベルクにいた。スーパーにも脱原発の署名用紙や、情報誌が置かれていた。



―住民投票
シェーナウという小さな町では、2回の住民投票を経て、原発を使わない自然エネルギー100%の電力会社を立ち上げた。ウルズラ・スラーデクさんは「民主主義とは、4年に一度選挙に出かけるだけであとは政治家に任せるのではなく、市民一人一人がかかわること、責任をもつこと」「住民投票をすることによって、政治家ではなくシェーナウの市民が賛成・反対、両方の意見を出し合って、家族内でも学校でもたくさん話しをすることになった。違う意見の人どうしが激しく議論することもあり、みなが議論をすることで、自分の意見を構築していく。その過程を経て、最終的に市民が政策を選び取った。これが大きな違い。そしてこれこそが、生き生きと活気に満ちた民主主義なのだ。」と語っている。


ベルリンや、ハンブルクでも同様に住民による脱原発のための電力会社自治化についての住民投票が行われた。ベルリン市営電力会社はバッテンファル(Vattenfall)という原発なども有するスウェーデンの企業に買収されてしまった。今回の法案は電力供給をまたベルリン市民が取り戻す(再自治化)ということ。それによって、再生可能エネルギーの導入や、民主的な経営、貧しい人への電力の供給などができるようになると言われていたのだ。

それにより普段はバラバラに活動している政党(緑の党、左派党、海賊党)などのベルリン議会の野党政党が共闘。そこにNGOも加わり知恵やお金を出し合って、再生可能エネルギー100%の民主的な電力を求めて活動した。


投票率は全体で29.1%。開票されたうち賛成票が83%を占めたものの、これは全有権者の24.1%。結果が有効になる全有権者の25%にはわずかに届かなかった。普段は関心の高い「電力について」の議題も、反対派の住民投票を盛り上げないキャンペーンが功を奏し、今回の低投票率につながった。さらに、普通ドイツでは日曜日は一部のキヨスクを除いてほぼ全ての店が休みにもかかわらず、投票日の11月3日はベルリンで年に数回ある「営業可能な日曜日」に指定されており多くの人が仕事に駆り出されたことも左右しているかもしれない。事実「賛成に投じたかったが、仕事があったから投票に行けなかった」という若い男性の話も聞いた。ハンブルグでも同様のエネルギーの自治化についての住民投票が2ヶ月前に行われている。結果は50.9%が賛成、反対が49.1%と接戦で、選挙と同日に行われたため絶対得票率の25パーセントも超え、電力自治化の方向性が決まった。

3.ハイデルベルクでは古い会議場の建て替えについて、カッセルでは市営図書館の数についてなどいろんなことが住民投票にかけられていた。


日本へのドイツ人からの言葉
ドイツ人の友達は「日本の自民党は衆参両院の過半数を取得して、憲法96条の改正して、憲法を変えやすくする、ということが書いてあった。それを読んで、僕らはヒットラー時代を思い出してしまう。首相がどういう人か分からないけど、どのような人でもそのような力を持つことは危険だ。」と話す。

ドイツにいると時々「日本は事故があったのに、どうして原発をまだ続けようとしているの?」と聞かれる。筆者は「原発に反対という想いを持っている人は過半数以上だが、選挙では原発が争点にならない。」と応えているが、本当に歯がゆい。今度の選挙ではきちんと原発のことについてきちんと議論されることを強く望んでいる。そして最終的にはシェーナウやリトアニアやブルガリアのように、住民投票や国民投票で原発を続けるか、やめるのか、みんなで考えて議論して決めるべきだと思う。



プロフィール
大芝健太郎 86年生まれ ジャーナリスト
有機農業をテーマに活動していたが、原発事故の後は世論を構わず強行する政府の姿勢に疑問を持ち、住民投票や国民投票に関心を持つ。昨年はドイツに留学し、ブルガリア、リトアニア、スイスなどの国民投票、住民投票を現地取材。月刊「社会運動」寄稿中。