2017年1月5日木曜日

民主主義の危機とは何か?

曰く「民主主義の危機」だそうです。突っ込みどころ満載で、一言書かずにいられなくなってしまいました。

「英国のEU離脱を決定した昨年6月の国民投票が大きい。私は「単純化」と言っているのですが、移民問題が貿易の関係まで否定することになりました。」 
イギリスがEUを抜けずに移民問題を、どのように解決できるのでしょうか人の移動の自由はEUの理念の根幹です。
 直接投票の問題ですが、大統領選にせよ国民投票にせよ、二者択一で行われるということなのですね。フランスの場合、二者択一は最後の段階で、それまでは第3党がいます。米国では共和党でも民主党でもない人が増えているのに、彼らを代表する政党がありません。国民投票は当然ながらイエスかノーか。A案に賛成だがB案にも魅力があると思っていても投票する時にはどちらかです。そのために無理をする、あるいはうそをつく。一点の賛否が全面的な賛否に変わりやすいのですね。
二者択一だから議論が起こり、嘘か本当かわからない情報が飛び交い、それをまた検証していくのです。うそは悪いですが、見抜けないのも国民の力不足ということです。
 それから特に国民投票の場合、結論が出た後の実施策について現実的な方策がありません。英国がEU離脱を決めても、離脱してからどうするかを書いていないからメイ首相はもたもたしています。
国民主権。民主主義ですから。国民が方向性を決める。議員、公務員が現実的な方策を作る。当たり前ではありませんか。メイさんは頑張っていると思いますよ。少なくとも「国民投票を経て民主主義の危機」なんて言いませんよ。
 直接投票の欠点を深刻にするのが電子情報化です。国民投票に近いのはツイッターでしょうか。電子情報化が進んだ社会では誰もが自分の意見を自由に発信できる。そのこと自体は悪くありません。しかし、ツイッターは短文です。複雑なことを発信する人はまずいません。笑い顔、泣き顔の顔文字がありますよね。ああいう単純な感情。ずっと思っているのだからという惰性的な思考。ツイッターはそういうものに向いています。
 もう一つ働きやすい原理が過剰適応です。すなわち、ある集団の中で議論をすると必ず過激な方が勝つ。第二次世界大戦中も、天皇陛下のために死ぬとなったら特攻隊まで行き着いた。ツイッターもそうなる可能性があります。
国民投票とツイッターが近いってどういう意味でしょうか。ツイートするように、投票にわざわざ足を運ぶと思っているのでしょうか。電子情報化は選挙は深刻にしないのでしょうか?「ある集団の中で議論をすると必ず過激な方が勝つ」って本当ですか。ツイッターがどのようになったら特攻隊に行き着くのでしょうか。どんな根拠があってそのようなことを言えるのでしょうか。そもそも戦争は国民投票ではなく、ツイッターでもなく、選挙で選ばれた議員が始めていますよね。

電子情報の世界にはプロの世論誘導者がいません。例えば新聞記者、雑誌の編集者、私たちのような寄稿者は、一応プロの訓練を受けています。今の時代、ここまではいいという一種の相場観を持っている。もし新聞が間違えたら世論の攻撃を受けますよね。安全弁がかかっているわけです。
世論誘導者ってなんですか。しかもプロって。一般大衆はツイッターなどの情報に騙されずに「安全弁のかかった世論誘導者」の言うことを聞けってことですか。私たちを馬鹿にするのもいい加減にしていただきたい。

もう一つ面白いのが、日本の有識者会議です。政府に委嘱され、見解をまとめ、政府に提出する。この過程が見えます。それを基に、政府は国会に法案を出す。この一手間をかけることで法案が有力になります。天皇陛下の退位問題も、極端なことを言う人たちは少なくなるでしょう。
有識者会議なんて、誰を招集するか決める時点で、結果なんてわかりきってるのに、天皇の退位問題で、反対してる人なんて、日本のどこに何人いるんですか?

16人の有識者のうち、8人が反対なんて。国民の総意はどこに行ってしまったんでしょうか。
 そして何といっても、議会を重視しないといけません。時間はかかっても、むちゃな結論を出すより国会で十分議論すべきです。
そもそも国会で多数派を取ればいいわけではありませんので、国民投票にかける方が、時間がかかります。議論も国民の議論も、政治家同士の議論も当然、活性化します。

しかも今の日本で、国会がどれだけむちゃな方法で結論を出しているか。安倍政権で続いている「安全保障関連法」「TPP」「カジノ(IR)法」などの強行採決を山崎さんは知らないのでしょうか?


主権者である国民が直接決定する直接民主主義の国民投票や、個人が情報収集と発信が自由にできるようになった現象を捕まえて、「民主主義の危機」を語るなんて。皮肉ですが、マスコミや学者の特権だった「世論誘導」はすでに民主化されてしまったのです。

そしてもう一つはポピュリズム批判です。批判すべきは排外主義や、人種差別、女性蔑視など個別具体的な問題です。大衆はいつも正しいとは限りません。多くの人を納得させる政策を提案するのが議員の仕事です。逆に大衆を納得させられない政策は民主主義に反します。

「ぼくはあなたの意見に反対ですが、あなたがそれを主張する権利は守ります。」ヴォルテールの有名な言葉です。ぼくは、これが担保されない状態が民主主義の危機だと感じます。