2017年4月11日火曜日

「子どもの貧困」阿部彩さんの本から抜粋


「1985年の時点においてさえ、日本の子どもの貧困率はすでに10.9%であった。この時期は、バブル経済に突入する頃であり、巷においては、貧困は愚か格差論争さえ始まっていない頃である。」

「1985年から2009年にかけて、多少の増減はあるものの、子どもの貧困率が右肩上がりに上昇し続けていること。」

「国際的にみても、日本の子どもの貧困率は決して低くない。ユニセフの推計(2012年)によると、2000年代半ばにおいて、日本の18歳未満の子どもの貧困率は、先進35カ国の中で上から9番目の高さにある。」

「とくに、日本のひとり親世帯に育つ子どもの貧困率は58.7%と突出しており、OECD諸国の中で最悪である。これは、ひとり親世帯の大半を占める母子せたいの貧困率がとくに高いためである。」

「子どものいる世帯の約12%はひとり親世帯ということになる。これは約8世帯に1世帯という数値であり、ひとり親世帯はもう決して珍しい世帯ではない。」

「日本の貧困の特徴は「ワーキング・プア」(働いているのに所得が貧困基準を超えない人々)が多いことであり、その背景には巨大な低賃金の非正規労働層が存在する。」

「親の学歴(世帯内で最も高い学歴)別に貧困率をみると、学歴による格差は明らかである。親の学歴が中卒の場合は、貧困率は45%と半数近くになるが、大卒以上であると8%となる。」

「教育学においては、親の所得と子どもの学力が綺麗な比例の関係にあることが実証されており、さらには、特に経済的困難を抱えている生活保護受給世帯に育つ子どもたちや、児童養護施設に育つ子どもたちの、極端な学力不足が報告されている。」

「国際NGOの日本組織であるセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが児童福祉の関係者などを対象に行った調査では、子どもの貧困が「自尊感情が低い」「不安」「自己肯定感が持てない」「精神的不安定」「希望が持てない」などといった心理面への影響を引き起こしているとの指摘が多数報告されている。」

「最新の海外の研究によると、相対的貧困が子どもに及ぼす一番大きな悪影響は、親や家庭内のストレスがもたらす身体的・心理的影響だという。家庭の中にストレスが満ち溢れ、心のゆとりのない生活が続くことは、最悪の場合は児童虐待などにも繋がってしまう可能性もある。」

「子ども期に貧困であることの不利は、子ども期だけに止まらない。この「不利」は、その子が成長し大人になってからも持続し、一生、その子につきまとう可能性がきわめて高い。」

「子ども期の貧困経験が、大人になってからの所得や生活水準、就労状況にマイナスの影響を及ぼすのであれば、その「不利」がさらにその次の世代に受け継がれることは容易に想像できる。生活保護を受けている世帯に育った子どもは、成人となってからも生活保護受給者となる確率が高い。」

「もし国がA君の子ども期に、彼が貧困を脱却する可能性を高めるような支援をしていたら、どうであろう。国は、A君が払ったであろう税金・社会保険料を受け取ることができる上に、生活保護や医療費などの追加費用を払う必要がなくなる。つまり、長い目で見れば、子ども期の貧困対策は「ペイ(pay)」する可能性が高い。逆にいえば、貧困を放置することは、「お高く」つく。これが「貧困の社会的コスト」である。」

「貧困者に対する職業訓練のように、貧困そのものに対処する試みをしなくとも、社会全体の経済状況さえ改善すれば貧困はおのずと解消していくという議論がある。」しかし「日本は、すでに、成長によってすべての人、とりわけ貧困層に、恩恵が「したたり落ちる」状況でないことは確かである。だとすれば、貧困削減そのものを目的とした具体的な政策を立てなければいけない。」

ここまで子どもの貧困についてのデータがあり、解決法の提案までできるのに、具体的に進んでいかないのはなぜだろうか。続きは本を手にとってみてください。