2018年4月4日水曜日

「同性婚」国民投票 アイルランド スロバキア スロベニアの場合

同性婚
2001年4月にオランダで初めて同性婚が認められたのを皮切りにフランス、スペインなどヨーロッパを中心に26の国と地域に認められる国が広がっていった。この同性婚については2013年にクロアチアで初めて国民投票に問われてから、2018年までに以下に紹介するスロバキア、アイルランド、スロベニアを含めて、世界で5件行われている。



スロバキア(2015年2月7日実施)同性婚禁止
 スロバキアでは署名を35万筆(有権者の約8%)以上集めると国民発議で国民投票を行える憲法の規定があり、「家族のための同盟」というカトリック団体は40万筆以上の署名を集め「同性婚禁止」を国民投票にかけるように申請をした。それに対してアンドレイ・キスカ大統領はこの国民投票は違憲だとして訴えたが、スロバキアの憲法裁判所は大統領の訴えを退けたため、2014年11月27日、国民投票を行うと宣言した。この国民投票が法的拘束力を持つためには、約440万の有権者のうち50%以上の投票率がなくてはならなかったため、同性婚禁止を求める賛成派は、スロバキア司教連盟を中心に寄付を募って、11万ユーロの資金を使い人口の62%を占めるカトリック教徒と共に、約二ヶ月に及び積極的にキャンペーンを展開した。一方、スロバキアのLGBT団体は規模も小さく、連携も取れていなかったため、投票率が50%を超えるのを恐れ、投票を拒否するように働きかけた。


投票結果
設問「あなたは結婚を男性と女性の関係とすることに同意しますか?」
投票率 21.41% 投票総数 944,674
賛成 95.81% 反対 4.19%

 投票率が50%を下回ったため、この国民投票は無効となった。他にも「同性のパートナーは養子を受け、育てることを禁ずる」「両親が望めば、子どもは学校の性教育を拒否することができる」というテーマも同時に問われ、90%を超える圧倒的賛成を得たが、投票率が低かったために同様に無効とされている。スロバキアでは、1993年にチェコスロバキアから分離独立してから、NATOに加盟するかなどをテーマに7回の国民投票が行われているが、EU加盟の以外のテーマはいずれも50%に届かず、全て無効になっており、一般的に投票に行く人が少なく成立がそもそも難しいというスロバキア特有の事情がある。


参考資料 
http://web.archive.org/web/20141209034357/http://abcnews.go.com/International/wireStory/slovakia-hold-referendum-sex-marriage-27218382
http://www.c2d.ch/detailed_display.php?lname=votes&table=votes&id=133713&continent=Europe&countrygeo=257&stategeo=&citygeo=&level=1&recent=1
http://www.reuters.com/article/us-slovakia-referendum-idUSKBN0L91OQ20150205



アイルランド(2015年5月22日実施)同性婚

 1922年にイギリスから独立したアイルランドは人口の84.2%をカトリック教徒が占め、1993年まで同性愛は違法とする法律が残されているほど保守的な国であった。しかし、2006年にカナダで同性婚をして帰国したレズビアンのカップルが、アイルランドで婚姻の権利を享受することができず、彼女らの訴えも裁判所に否決されたことは、大きく報道され、同性婚をアイルランドでも認めるべきだという声が上がり始めた。他の欧州各国に続くように、同性でも結婚と同様の法的権利を認められる市民パートナーシップ法が2010年に成立したが、養子縁組なども認める同性による婚姻については憲法の改正が必要だった。そこで2011年に選挙で勝利した統一アイルランド党と労働党の連立政権のエンダ・ケニー首相は同性婚を認める憲法改正に向けた議論を始め、国民世論の高まりを受け主要4政党も合意し、2015年に国民投票にかけられることになった。



投票結果
設問「結婚は、性別と関係なく2人によって成立する」
投票率 60.52% 投票総数 1,949,725
賛成 62.07% 反対 37.93%


 カトリック司教議会は反対に投じるよう働きかけたが、司教による性的虐待などの不祥事が相次いでおり、支持を広げることができなかった。一方この国民投票を主導したケニー首相は「国民の答えは同性婚にイエスだった。これは小さな島からの大きなメッセージである」と述べた。この結果により世界で初めて、国民投票で同性婚が認められた事例となった。この憲法改正によってできた法律の下で、アイルランドでは半年間に同性による412組の新しいカップルが生まれている。調査によるとアンケートに答えた「LGBT(性的少数者)」のうち39%が、国民投票で同性婚が認められてから、この一年で初めて「自分がLGBTである」と周りに告白したとしている。また14歳から23歳の若者に限ると53%にも昇る。国民投票の結果がLGBTを自認する人の背中を押したのは間違いない。


参考資料 
http://www.huffingtonpost.jp/2015/05/23/ireland-votes-same-sex-marriage-yes_n_7429696.html?utm_hp_ref=tw
http://www.irishtimes.com/news/social-affairs/increase-in-lgbt-people-coming-out-since-marriage-referendum-1.2656627#.V0Vh0JWHyNA.twitter
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/ireland/data.html#section1
https://www.rte.ie/news/vote2015/2015/0523/703205-referendum-byelection/
アイルランドを知るための60章 明石書店 山下理恵子・海老島 均


スロベニア(2015年12月20日実施)同性婚

 スロベニア議会は2015年3月、EUからの圧力もあり結婚について「男性と女性によるもの」から「二人によるもの」と法律を変更した。それに対して、保守的なカトリック教会などから支援を受けている中道右派政党のスロベニア民主党は「子どもたちが危険にさらされている」というグループを組織し、同性婚を認める法律に反対する署名を集め、国民投票に必要な40,000筆(有権者の約2%)以上の署名を一ヶ月で集めた。しかし議会は、この国民投票は基本的人権に反する憲法違反だとして裁判所に訴えたが、この署名は国民投票を実施するために有効だと判決を下したため、国民議会は11月4日、国民投票を行うことを決定した。


 賛成派は「誰も愛する権利を妨げてはならない」というスローガンを掲げ、与党を含むほぼ全ての政党が賛成派のキャンペーンに参加し、中欧で初めて同性婚が認められる国になることを目指した。 一方、署名から活動していたグループは、「同性婚支持者は、父性と母性が子どもの成長に大切だということを理解していない」と、キャンペーンを行い、57%を占めるカトリック信者を中心に訴えた。またアイルランドで同性婚が認められたことを受けて、危機感を持ったローマ教皇は「伝統的な家族は社会生活の原点になる」などとメッセージを送り反対派を激励した。傾向として、無神論者で都会に住む若い女性は賛成。逆に反対派は田舎に住むカトリック信者で年配の男性という傾向が強かった。この傾向はアイルランドやスロバキアの場合でも同様だった。

投票結果
設問「2015年3月3日に国会で決まった同性婚に関する法律の発効を認めますか?」
投票率 36.38% 投票総数 623,489
賛成 36.49% 反対 63.51%


 法律を失効するための拘束力を持つには過半数の反対及び、絶対得票率20%が必要だが、その基準も上回っていたために、同性の結婚を認める法律は廃案になった。事前の世論調査では、これほどの差が付くと思われていなかったが、無効になる可能性が示唆されたため、賛成派の中で実際に投票所に足を運ばなかった人も多くいたとされている。同性婚が国民投票で否決されたため、現在は同性であっても市民パートナーシップとして登録することができるが、養子をもらうことはできない。


参考資料
http://www.politico.eu/article/slovenia-says-no-to-gay-marriage-lgbt-lgbti-rights/
http://www.sudd.ch/event.php?lang=en&id=si012015
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/slovenia/data.html
http://newsinfo.inquirer.net/748376/pope-backs-family-values-in-slovenia-ahead-of-gay-marriage-vote

オーストラリアについては後日アップする予定です。